X(旧ツイッター)で話題の「救急隊が嘘をつく・医者の態度が悪い」問題について元消防士が伝えたいこと

結論:救急隊が悪い、医者が悪い──そんな“くくり”で語るのは間違い!問題はそこじゃない。

最近Xで話題の
「救急隊が嘘をついた」
「医者の態度が悪い」
といった投稿。

どうしても目についてしまうし、読んでいてしんどくなる。

私は元消防士として、綺麗事と言われるかもしれないけれど、生命を助ける。という同じ目的を持った者同士、リスペクトして協力し合う。

そんな世界になってほしいと願っています。

また、この話題の背景について、元消防士として思うことがある。
悪いのは“救急隊”でも“医師”でもなく、その背景にある救急医療体制じゃないでしょうか。

15年以上消防士として働き、その半分以上を救急隊で過ごしてきた私の体験に基づいて、モチベーション維持が難しい実態や、お互いに目指してほしい未来、話題の”嘘つき・態度悪い”問題についての見解をお伝えしたいと思う。

目次

実際の現場は、ドラマとはまったく違う。1分1秒を争うのは100件に1件レベル。

まず、世の中が誤解していること。

「救急ってドラマみたいに緊迫してるんでしょ?」
と言われるけど、実際は全然違う。

本当に1分1秒を争うような重症は、
100件に1回あるかないか。
下手したら1000件に1回レベル。

日常の多くは、

  • 本当に救急車が必要なのか?
  • 本当に今日、今すぐ受診が必要なのか?

と思うケースが大半だった。

酔っ払い、夫婦喧嘩、念のため、足がない、、、数えればキリがない。

これは誰が悪いわけでもない。

医療につながる窓口が少ない、
判断する場所がない、
病院に行けば、救急車を呼べば、誰でも平等に医療を受けられる。
その仕組みの問題。

でもその結果、
現場で働く救急隊や医師にしわ寄せがいって、心身ともにすり減っていく。

だから、救急隊も医師も“モチベーションが上がらない日”が普通にある。

現場にいたからこそ分かる。

救急隊も医者も、
最初はみんな「人を助けたい」という思いでこの道を選んでいる。

でも、実際は

  • 夜中3時に「指にトゲが刺さった」
  • 「何ヶ月も痛いけど今日はちょっとひどい」
  • 「タクシー代わり」
  • 「話を聞いてほしかっただけ」

みたいな出動も本当に多い。

それが何回も続くと、
どれだけ使命感があってもメンタルは削られていく。

だから、
態度がきつくなったり、
言葉が荒くなったり、
説明が雑になったりしてしまう人が出る。

もちろんそれが良いとは言わない。
でも、それは職業の問題ではなく“仕組みからくる個人の限界”

志だけではどうにもならないことがある。

これは間違いない。

元消防士が見てきた、救急隊と医師のリアル

素晴らしい救急隊もいた

  • 患者に寄り添う言葉がけ
  • 家族の不安を解いてくれる安心感
  • 現場での素早く的確な判断
  • 医療機関へのスムーズな引継ぎ

本当に尊敬できる仲間はたくさんいた。

でも、よろしくない態度の人も確かにいた

  • 説明が雑
  • 患者への言葉が刺さる
  • イライラを隠せてない
  • 誤解を招いてしまうような引継ぎ

けど、それは救急隊という職業という括りではなく
その人の個人の問題やコンディション

「ここで若手職員へのアドバイス」

消防士になりたて、救急隊になりたての若手の職員の中には隊長の言動に悪い意味で驚かれるかたもいらっしゃると思います。

そういった感情を持ってしまうのはわるいことではありません。
ですが、隊長が自分の理想とする救急隊像じゃなかったとしても自分までも悪いと思わないようにしてください。

先ほども書きましたが、やはり中には、医師に対しても患者に対しても対応がよろしくないと感じた隊長がいることも事実です。

その隊長を変えることはほぼ無理ですので、自分の立ち振舞いにフォーカスしてください。

私は、どうしてこんな言い方するんだろう、自分だったらこうするのに。と階級と先輩後輩の力関係の中でなんにもできない自分の無力さに悩み、苦しんだ経験があります。

あなたはあなたができることを一生懸命する。それでいいんです。

病院でもまったく同じ構図がある

  • 神対応の医師
  • 深夜でも丁寧に接してくれる看護師
  • 救急隊に「わかりました。あとは診ておきますね。」と言ってくれるドクター

一方で、

  • 「これ、なんでウチなん?」
  • 患者や家族に冷たい
  • 救急隊の説明を遮る、聞かない。

そんな医師もいた。

でも、
医療現場は慢性的に人手不足。
休む暇もない。

態度の問題は“個人”ではなく、
制度の歪みが、人をそうさせてしまっている部分が大きい。

SNSで話題の “救急隊vs医師” の構図について

職業は違えど救急隊も医師も向いている方向は同じ。

「1秒でも早く助けたい。」

「生命を繋ぎたい」

ただそれだけ。

その裏で、
仕組みの不備や誤った利用によって、
両者が疲れ果ててしまっている。

このような背景が今回の医師vs救急隊問題に拍車をかけているように思います。

だからこそ、職業全体を括って叩きあうのは違う。

救急隊も医師も人間。

・睡眠不足
・休憩なしの連続対応
・体調不良を抱えたまま勤務
・終わりの見えない業務量

それでも「助けたい」と踏ん張っている。

その中で起きた
“態度の悪い人”
“嘘をつく人”
“冷たい対応をする人”

これは その職業全体ではなく、一部の個人の問題。
そして、その背景には 構造的な原因 がある。

それでも僕は、救急も医療も“お互いをリスペクトする世界”であってほしい

元消防士として、これは強く思う。

  • 救急隊は医療を尊敬し
  • 医療側も救急の負担を理解し
  • 患者も現場の限界を知り
  • 社会全体が正しい医療利用を意識する

そんな世界であってほしい。

綺麗事かもしれない。
でも現場にいたからこそ、本気でそう願う。

そうじゃないと、今当たり前に受けられている救急医療がいつか破綻する日がきてしまう。

そんな最悪の未来が来てしまうかもしれない。

まとめ:救急も医療も“敵”じゃない。問題は個人ではなく、社会の仕組み。

Xでバズる話は、どうしても極端で刺激的。
だけど現場はもっと泥臭いし、もっと複雑です。

救急隊が、医者が、
そんな簡単な話ではない。

むしろ必要なのは、

  • 正しい医療の使い方
  • 救急と医療を支える制度の見直し
  • 現場にリスペクトを向ける社会

そして、
お互いが支え合える関係であること。

元消防士としての願いです。以上!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

アラフォー消防士が15年以上勤めた消防からの退職を決意。転職リアルストーリーを発信します。妻子ありの消防パパの転職ロールモデルとなることを目標に歩みを進めていきます!「このままでいいのか?!」となんだかモヤモヤを感じている方に勇気を与えます。

目次